ふたつの時を、重ねていく【『ふたつの弧が、重なるとき』番外編】
緩衝材で丁寧に包んだ大きな酒瓶を、専用の紙袋に入れて手渡す。
「息子の成人祝いに」と微笑んでいたお客さんの背中へ向かって、声を張った。
「ありがとうございました!」
人に話すと「イメージそのままじゃん」と笑われるが、俺は酒屋の息子だ。
今日は成人の日。一つ下の妹が成人式に出席するため、家族はみな朝から慌ただしくしており、俺が一人で店番を任されている。
ずらりと並んだ酒瓶の棚の先。
店のガラス戸の向こうでは、関東では珍しく雪がチラチラと舞っていた。
ふいに、エプロンのポケットでスマホが震える。
取り出した画面には、『いずみ』の文字。
サークルの友人である祥太郎、『ヨッシー』こと美絵、『いずみん』こといずみとのグループチャットに、写真付きのメッセージが届いた。
『みてみて〜! 私の振袖は、こんなかんじ!』
そこには、南国生まれで底抜けに明るい彼女らしい、橙色の生地に黄色の小花が散りばめられた鮮やかな振袖姿が写っている。
次のお客さんが来る気配はない。手早く返信を打つ。
『いずみん、めっちゃ似合ってんじゃん! 祥太郎とヨッシーは?』
こいつらとは大学の同級生だが、実は俺のほうが一つ年上だ。
一度は文学部へ入学したものの、少し病気をした父親のリハビリに付き添ったのを機に、健康や身体のケアを学べる体育学部に興味を持った。
そして親に我儘を言って、翌年、入り直したという経緯があり、俺だけ成人式は去年のうちに終えているのだ。
数分後、祥太郎から一枚の写真だけが送られてきた。
地元が同じヨッシーと一緒に式へ出席しているようで、仲睦まじく並んで写っている。
「…………プッ」
思わず笑ってしまった。