ふたつの時を、重ねていく【『ふたつの弧が、重なるとき』番外編】
雪国の真っ白な背景に、ヨッシーの澄んだ藍色の振袖がよく映え、持ち前の綺麗な顔立ちに大層似合っている。
そして、その横にいるスーツ姿の祥太郎。
背の高いこいつが手を伸ばして撮ったのだろうが――どう見ても、画角がヨッシー中心すぎる。
自分の顔は見切れる寸前で、「美しい恋人が映っていればそれでいい」と言わんばかりの構図だ。
いや、彼女に夢中すぎるあまり、無意識にレンズが寄ったのかもしれない。
「だれそれー!? めっちゃ美人!」
唐突に背後から声がして振り返る。
早朝に着付けを終え、式に向かうまでの暇を持て余している妹。奥にある家からふらりとやってきて、俺のスマホ画面を興味津々に覗き込んでいた。
「サークルの友達! 横に写ってるのが大学で一番仲良いやつで、その彼女だよ」
「なーんだ。正人の新しい彼女かと思ったのに」
つまらなそうに息を吐く妹に、苦笑いを返す。
俺もついこの前まで、他学部の子と半年ほど付き合っていた。
友達の紹介で、話も合ういい子だったから自然な流れだったものの――互いにどうしても『最後の一ピース』がハマらないような感覚が拭えなかった。
何か大きな出来事があったわけでもなく、話し合いの末、元の友人関係に戻ったのだ。
「彼氏のほうも、よく見るとカッコいいじゃん」
「ん? そうか?」
改めて、じっと見てみる。
すっきりとした小顔。元エースピッチャー特有の肝が据わった落ち着きもあるから、たしかに女性受けはいいのかもしれない。
けれど、俺は知っている。こいつは――彼女のことになると途端にポンコツと化す男だということを。
ちょっとしたすれ違いで「振られるかも」などと言って、昼間のカラオケボックスでメソメソしていた去年の春を。
「もし二人が別れたら、その彼氏紹介してっ?」
吹き出しながら「ねえだろっ」と即答した。
別れる未来なんて、微塵も想像できない。
再度、手元の写真を見つめる。
こいつらは、互いにとっての唯一無二だ。
二人の物語は、まるでおとぎ話のように眩しい。
現実はきっと、俺のように『なんとなく始まって、なんとなく終わる』恋愛のほうが大半だろう。
それでも、この二人の軌跡を近くで見守れるのは、ちょっとした希望をもらえるようで悪くない。