ふたつの時を、重ねていく【『ふたつの弧が、重なるとき』番外編/不定期更新中】
◇
帰りの電車に乗り込む。
「次出かけるの、どこがいい?」
祥ちゃんが穏やかな声で問いかけてくれる。
「んー。遊園地かなあ? ジェットコースターあるところがいい!」
「へえ。好きなの?」
「うんっ」
彼は「はは。そうなんだ」と、なぜか嬉しそうに笑っていた。
その笑顔に、また『好き』が募る。
「…………」
「…………」
ふと会話が途切れたとき。
彼が、二人のあいだに置いていた私の手を、そっと包んだ。
付き合った日とは違う、繋ぎ方――。
彼の骨ばった指を感じて、鼓動のスピードが急速に上がっていく。
(こ、『恋人繋ぎ』……!)
静かに目を丸くしながら隣を盗み見ると、祥ちゃんは少し視線を落として前を向いたままでいる。
ドキドキするけれど、居心地の良さもあって――この時間がずっと続いてほしくなった。
「……じゃあ、バイト頑張って」
そんな願いとは裏腹に、電車はすぐに祥ちゃんの降りる駅に着いてしまった。
私も彼も、このあと直接バイト先へ向かうのだ。
名残惜しそうに、するりとほどかれる指たち。
「……うん。祥ちゃんも」
立ち上がった彼が、「……あ」と振り返る。
「今日……楽しかった。ありがとう」
少し照れながらも、そう言ってくれた。
「私もっ……! ありがとう!」
「うん」
目尻を下げながら控えめに手を上げた祥ちゃんは、ホームに残り、走り出す電車を見送ってくれる。
窓越しに、小さく手を振り合ってバイバイした。
彼の姿が見えなくなった瞬間、もう恋しくなる。
小さく揺れる座席で、一人ぼんやりと考えた。
(もっと……くっついとけばよかった)
車内でお別れのハグ……なんてことは、もちろんできないし。
その先……も、初めてのデートだから、ちょっぴり期待している私がいたのだけれど。
初めての手の繋ぎ方と、別れ際に見た笑顔を思い出す。
彼は私の……恋人なんだ。
改めてそう考えるだけで、これから近づいていく距離への期待で、また胸が高鳴ってしまうのだった。
―― 終 ――
帰りの電車に乗り込む。
「次出かけるの、どこがいい?」
祥ちゃんが穏やかな声で問いかけてくれる。
「んー。遊園地かなあ? ジェットコースターあるところがいい!」
「へえ。好きなの?」
「うんっ」
彼は「はは。そうなんだ」と、なぜか嬉しそうに笑っていた。
その笑顔に、また『好き』が募る。
「…………」
「…………」
ふと会話が途切れたとき。
彼が、二人のあいだに置いていた私の手を、そっと包んだ。
付き合った日とは違う、繋ぎ方――。
彼の骨ばった指を感じて、鼓動のスピードが急速に上がっていく。
(こ、『恋人繋ぎ』……!)
静かに目を丸くしながら隣を盗み見ると、祥ちゃんは少し視線を落として前を向いたままでいる。
ドキドキするけれど、居心地の良さもあって――この時間がずっと続いてほしくなった。
「……じゃあ、バイト頑張って」
そんな願いとは裏腹に、電車はすぐに祥ちゃんの降りる駅に着いてしまった。
私も彼も、このあと直接バイト先へ向かうのだ。
名残惜しそうに、するりとほどかれる指たち。
「……うん。祥ちゃんも」
立ち上がった彼が、「……あ」と振り返る。
「今日……楽しかった。ありがとう」
少し照れながらも、そう言ってくれた。
「私もっ……! ありがとう!」
「うん」
目尻を下げながら控えめに手を上げた祥ちゃんは、ホームに残り、走り出す電車を見送ってくれる。
窓越しに、小さく手を振り合ってバイバイした。
彼の姿が見えなくなった瞬間、もう恋しくなる。
小さく揺れる座席で、一人ぼんやりと考えた。
(もっと……くっついとけばよかった)
車内でお別れのハグ……なんてことは、もちろんできないし。
その先……も、初めてのデートだから、ちょっぴり期待している私がいたのだけれど。
初めての手の繋ぎ方と、別れ際に見た笑顔を思い出す。
彼は私の……恋人なんだ。
改めてそう考えるだけで、これから近づいていく距離への期待で、また胸が高鳴ってしまうのだった。
―― 終 ――