ふたつの時を、重ねていく【『ふたつの弧が、重なるとき』番外編/不定期更新中】
◇
映画が終わって入った、近くの喫茶店。
周囲のざわめきに紛れるように、スンッ、と鼻の奥を小さくすすった。
クライマックスのシーンで、すごく泣いてしまったのだ。
「いい話だったな」
ホットコーヒーを飲む、目の前の祥ちゃんが言う。
「……うん」
運命的な出会いをした男女が、数々のドラマチックな出来事を経て、やがて結ばれる素敵な物語だった。
けれど私は、ヒーローに昔から想いを寄せ続けていた、いわばヒロインの恋敵に自分を重ねていた。
彼と結ばれた美しいヒロインとは対照的に、失恋したその女性は、抜けているところもあるけれど無邪気に、健気に、彼に恋していた。
最後、その想いが報われずに涙を流す姿を見て、まるで自分自身が失恋したかのように痛いほど感情移入してしまったのだ。
エンドロール中、隣の祥ちゃんに気づかれないよう、こそこそとハンカチで涙を拭き取ったつもりだったのだけれど、バレていないだろうか……。
「……結構、泣いた?」
いや、やっぱりバレていた。
「あ、うん。振られた女性の方に、感情移入しちゃって……」
「…………」
彼はカップを持ち上げながら、じっと私を見つめている。
先日、裏庭で想いを伝えたときにも、思いきり泣き顔を見せてしまったばかりなのに。
直近で二度も泣いてしまうなんて、相当な泣き虫だと思われていないだろうか。
「祥ちゃんは……どっちの人が好きだった?」
「えー……」
視線を斜め上に向けながら考えている。
彼は今まで、どういう人を好きになったんだろう。
付き合うのは私が初めてだと、この前、電話をくれた夜に教えてくれたけれど……。
高校は共学だったのだし、好きな人くらいは……いたのかな。
それに、これだけ優しくてカッコいいのだから、絶対にモテていただろう。
真希さんみたいに綺麗な人にも、気に入られているくらいだし……。
彼がしばらく悩んでいたので、質問を変えてみる。
「じゃあ……どういう人がタイプ?」
祥ちゃんは「タイプか。考えたことないな」と言いながら、カップをコトッとお皿の上に戻した。
そして、少しの間のあと、ためらいながら言った。
「……好きな人がタイプ。みたいな」
(…………!!)
目を逸らしながらぽつりとこぼされたその言葉に、思わず心臓が跳ねる。
よくある答えなのかもしれないけれど、いざ自分が言われてみると、たまらなく舞い上がってしまう。
言ったあとに恥ずかしさが増したのか、彼はまた慌てたようにカップを持ち上げていた。
「……美絵は?」
「えっ」
チラッと視線を向けられる。
顔に熱が集まるのを感じながら、そっと口を開いた。
「わ、私も同じ……かな」
「……そっか」
私も慌ててアイスミルクティーのストローに口を付ける。
二人の間に流れる空気が、こそばゆくて仕方がなかった。
映画が終わって入った、近くの喫茶店。
周囲のざわめきに紛れるように、スンッ、と鼻の奥を小さくすすった。
クライマックスのシーンで、すごく泣いてしまったのだ。
「いい話だったな」
ホットコーヒーを飲む、目の前の祥ちゃんが言う。
「……うん」
運命的な出会いをした男女が、数々のドラマチックな出来事を経て、やがて結ばれる素敵な物語だった。
けれど私は、ヒーローに昔から想いを寄せ続けていた、いわばヒロインの恋敵に自分を重ねていた。
彼と結ばれた美しいヒロインとは対照的に、失恋したその女性は、抜けているところもあるけれど無邪気に、健気に、彼に恋していた。
最後、その想いが報われずに涙を流す姿を見て、まるで自分自身が失恋したかのように痛いほど感情移入してしまったのだ。
エンドロール中、隣の祥ちゃんに気づかれないよう、こそこそとハンカチで涙を拭き取ったつもりだったのだけれど、バレていないだろうか……。
「……結構、泣いた?」
いや、やっぱりバレていた。
「あ、うん。振られた女性の方に、感情移入しちゃって……」
「…………」
彼はカップを持ち上げながら、じっと私を見つめている。
先日、裏庭で想いを伝えたときにも、思いきり泣き顔を見せてしまったばかりなのに。
直近で二度も泣いてしまうなんて、相当な泣き虫だと思われていないだろうか。
「祥ちゃんは……どっちの人が好きだった?」
「えー……」
視線を斜め上に向けながら考えている。
彼は今まで、どういう人を好きになったんだろう。
付き合うのは私が初めてだと、この前、電話をくれた夜に教えてくれたけれど……。
高校は共学だったのだし、好きな人くらいは……いたのかな。
それに、これだけ優しくてカッコいいのだから、絶対にモテていただろう。
真希さんみたいに綺麗な人にも、気に入られているくらいだし……。
彼がしばらく悩んでいたので、質問を変えてみる。
「じゃあ……どういう人がタイプ?」
祥ちゃんは「タイプか。考えたことないな」と言いながら、カップをコトッとお皿の上に戻した。
そして、少しの間のあと、ためらいながら言った。
「……好きな人がタイプ。みたいな」
(…………!!)
目を逸らしながらぽつりとこぼされたその言葉に、思わず心臓が跳ねる。
よくある答えなのかもしれないけれど、いざ自分が言われてみると、たまらなく舞い上がってしまう。
言ったあとに恥ずかしさが増したのか、彼はまた慌てたようにカップを持ち上げていた。
「……美絵は?」
「えっ」
チラッと視線を向けられる。
顔に熱が集まるのを感じながら、そっと口を開いた。
「わ、私も同じ……かな」
「……そっか」
私も慌ててアイスミルクティーのストローに口を付ける。
二人の間に流れる空気が、こそばゆくて仕方がなかった。