凸凹だっていいじゃないか
『スー……』
「ひゃ!?」

 背中がなぞられる感覚がした。
 思わず反射的に、後ろをはたく。
 犯人に当たったようだ。
 ……誰なんホントに!?

「ひっどーい、矢野さんが平手打ちしてきたぁ」

 お前かよ柄本理恵!!!
 顔をはたいてしまったようで、ほおを抑えている。そんな痛くはないはず。

「ごめん。でも、そんな強くやってないから。しかも平手打ちぃ?」
「いや、こんなんだったよ。パァシィィィン」

 スローモーションで平手打ちを再現してくる。
 ほうほうほう、後ろを見ないでそんな平手打ち、逆にすごいわな。
 私は手の甲だったし。

「はぁぁ……で?」
「で?とは」

 ……は?

「用ないのにちょっかい出しに来たのかよ!!」
「それがどうしたのよ!?」

 ……頭が痛ぇ。
 もう無視しようかと思ったけれど。
 柄本の爪が目に入った。

「マニキュアしてんじゃねぇよ」
「それが〜?」
「私、生活規律委員だよ?」

 生活規律委員には、一発アウトな校則違反を見かけたら先生にチク……報告する義務がある。
 私はなぜか、学級委員と同じぐらい重要な委員会に入ってしまったのだ。

「あたし学級委員だから揉み消せるもんねー!」

 え? 柄本が学級委員?
 クラス大丈夫?

 学級委員は、クラスをまとめ上げる委員会である。それは間違っていない。
 でも、暗黙の了解で、学級委員は校則違反が見逃されてしまうのだ。意味わかんない。怖いねー。
 ああ、だからか。柄本が制服を着崩してるのは。

 もうすぐ、最終下校時間だ。
 無視を決め込んで、さっさと昇降口へ行くことにした。
 何か言ってるけど聞こえなーい。耳悪いもん。

 いつの間にか、さっきの不安を忘れてしまっていた。
 その代わり、精神的にもっと疲れた。もうヤダ。
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