似た者同士の契約婚 ~結婚しないと宣言した日に出会った相手は、不眠の心臓外科医でした~
一方で、優斗の両親は美空の両親とは真逆の反応だった。
大地主だという彼の屋敷は、庭に池があるような立派なお屋敷だった。
(これが優斗さんのご実家かあ。我が家の激狭マンションとは大違い)
屋敷を眺めて感嘆のため息をつくと、隣の優斗はなんとも言い難い表情で苦笑いしていた。
しかし門が自動で開かれ、敷地に足を踏み入れると、一瞬で空気が変わる。
美空の隣を歩く優斗からは一切の表情が消え失せ、能面のような表情になっていたし、家政婦らしき女性には品定めされるかのような鋭い視線を浴びせられた。
冷たい雰囲気の彼は、目元の隈がいつもより濃く見えた。
「優斗さん、お帰りなさい。奥の和室でお待ちいただくよう仰せつかっております」
「分かった」
美空には冷たい視線しか投げなかったその女性は、口角だけをぎゅっと上げて優斗に笑いかけている。
けれども優斗は視線を合わせることもなく、美空の腕をそっと引いて奥へと進んでいった。
庭の見える和室に入ると、シンとした静寂が訪れる。
そわそわしていると、優斗が密やかに美空の耳に口を寄せた。
「もうすぐ両親が来るけど、あの人たちの言うことは適当に流して。何か言われたら全部俺が答えるから」
「は、はい……!」
「ははは、緊張してないで」
優斗はほんの少しだけ微笑んでいたが、すぐにまた無表情に戻る。
静かにふすまが開かれたからだ。そこには背の高い初老の男性と、すらりとして美しい着物姿の女性が立っていた。
「早かったな。早すぎるくらいだ」
「随分と急だったわね」
優斗の両親は部屋に入ってくるなり、優斗に非難の視線を向けている。
対面に彼らが座ると、優斗の雰囲気が冷たいものへと変わっていくのが感じられた。
(この方々は本当に優斗さんのご両親? 家族って雰囲気じゃないけど)
緊張感の増した和室で、美空は背中の冷や汗を悟られないように姿勢を正した。
「こちらの美空さんと結婚することにしたから。結婚式とか面倒事は来年以降考えるよ」
「桜井美空と申しますっ……」
優斗の雑な説明に驚きつつ頭を下げると、優斗の母は無言で頷いた。かろうじて微笑んでいるのが逆に恐ろしい。
彼の父は黙って聞いていたが、「お前が決めたのならそれでいい」と言い放った。
(そ、それだけ?)
美空が優斗の父を見つめていると、ふと目があった。
「美空さん。未熟な奴ですが、どうかよろしく頼みます。『あかつき』を継ぐのはこいつですから」
「こ、こちらこそ、よろしくお願いいたします」
険しい顔のまま頭を下げられ、美空も慌てて頭を下げる。
すると優斗の母が「あなた、顔が怖いですよ」と優斗の父を嗜めた。
「美空さん、あまり気負わないでちょうだい。宮倉の男は自分勝手だから、すぐ喧嘩するのよ。まともに取り合う必要ないわ」
「え、えっと……は、はい」
なんと答えて良いかわからずしどろもどろになっていると、優斗が立ち上がった。
「じゃあ、そういうことだから」
優斗は用が済んだとばかりに美空の腕を引いて帰ろうとする。
すると「こちらも筋は通す。後は自分でけじめをつけろ」と彼の父の声が追いかけてきた。
「……分かってる」
優斗はそれだけ言うと、美空を連れて屋敷を後にした。
大地主だという彼の屋敷は、庭に池があるような立派なお屋敷だった。
(これが優斗さんのご実家かあ。我が家の激狭マンションとは大違い)
屋敷を眺めて感嘆のため息をつくと、隣の優斗はなんとも言い難い表情で苦笑いしていた。
しかし門が自動で開かれ、敷地に足を踏み入れると、一瞬で空気が変わる。
美空の隣を歩く優斗からは一切の表情が消え失せ、能面のような表情になっていたし、家政婦らしき女性には品定めされるかのような鋭い視線を浴びせられた。
冷たい雰囲気の彼は、目元の隈がいつもより濃く見えた。
「優斗さん、お帰りなさい。奥の和室でお待ちいただくよう仰せつかっております」
「分かった」
美空には冷たい視線しか投げなかったその女性は、口角だけをぎゅっと上げて優斗に笑いかけている。
けれども優斗は視線を合わせることもなく、美空の腕をそっと引いて奥へと進んでいった。
庭の見える和室に入ると、シンとした静寂が訪れる。
そわそわしていると、優斗が密やかに美空の耳に口を寄せた。
「もうすぐ両親が来るけど、あの人たちの言うことは適当に流して。何か言われたら全部俺が答えるから」
「は、はい……!」
「ははは、緊張してないで」
優斗はほんの少しだけ微笑んでいたが、すぐにまた無表情に戻る。
静かにふすまが開かれたからだ。そこには背の高い初老の男性と、すらりとして美しい着物姿の女性が立っていた。
「早かったな。早すぎるくらいだ」
「随分と急だったわね」
優斗の両親は部屋に入ってくるなり、優斗に非難の視線を向けている。
対面に彼らが座ると、優斗の雰囲気が冷たいものへと変わっていくのが感じられた。
(この方々は本当に優斗さんのご両親? 家族って雰囲気じゃないけど)
緊張感の増した和室で、美空は背中の冷や汗を悟られないように姿勢を正した。
「こちらの美空さんと結婚することにしたから。結婚式とか面倒事は来年以降考えるよ」
「桜井美空と申しますっ……」
優斗の雑な説明に驚きつつ頭を下げると、優斗の母は無言で頷いた。かろうじて微笑んでいるのが逆に恐ろしい。
彼の父は黙って聞いていたが、「お前が決めたのならそれでいい」と言い放った。
(そ、それだけ?)
美空が優斗の父を見つめていると、ふと目があった。
「美空さん。未熟な奴ですが、どうかよろしく頼みます。『あかつき』を継ぐのはこいつですから」
「こ、こちらこそ、よろしくお願いいたします」
険しい顔のまま頭を下げられ、美空も慌てて頭を下げる。
すると優斗の母が「あなた、顔が怖いですよ」と優斗の父を嗜めた。
「美空さん、あまり気負わないでちょうだい。宮倉の男は自分勝手だから、すぐ喧嘩するのよ。まともに取り合う必要ないわ」
「え、えっと……は、はい」
なんと答えて良いかわからずしどろもどろになっていると、優斗が立ち上がった。
「じゃあ、そういうことだから」
優斗は用が済んだとばかりに美空の腕を引いて帰ろうとする。
すると「こちらも筋は通す。後は自分でけじめをつけろ」と彼の父の声が追いかけてきた。
「……分かってる」
優斗はそれだけ言うと、美空を連れて屋敷を後にした。