似た者同士の契約婚 ~結婚しないと宣言した日に出会った相手は、不眠の心臓外科医でした~
 リビングに移動し、間接照明をつけて少しだけ明るくする。
 二人は向かい合い、足を伸ばして座った。

「まず首のストレッチをしましょうか。肩コリなんかにも効きますよ」

 そうして簡単なストレッチから始め、ゆっくりと呼吸をしながら簡単なポーズを教えていく。

「……良い感じです。呼吸は止めないで。ぐーっと筋が伸びているのを感じてくださいね」

 優斗は真面目に美空の言った通りのポーズを取っている。最初は少し戸惑っていたが、いつのまにか自分の呼吸に集中しているようだった。
 美空は邪魔をしないように、声かけを最低限にしながら進めていった。

「では最後に深呼吸をしましょう。口からゆっくり吐いてー。鼻から空気が戻ってきます。……はい、これでおしまいです。どうでしたか?」
「身体が軽くなったようだ。眠気も……だいぶあるな」

 確かに優斗の表情が和らいでいる。美空は内心安堵のため息をついた。

(良かったー! 人に教えるのは久しぶりだったけど、なんとか出来た気がする)

 優斗はゆっくりと立ち上がると、ちらりと時計を見た。

「すっかり遅くなってしまったな。こんな時間まで付き合ってくれてありがとう」
「いえ、お誘いしたのは私ですし! あの……気分転換になりましたか?」

 美空がおずおずと尋ねると、優斗が微笑んで頷く。

「かなり良かった」

 彼の細められた目が、美空の視線を捉える。
 いつもと同じ笑顔なのに、美空の心臓はなぜかドキドキと音を立て始めた。

(な、何? ストレッチが久しぶりだから、負荷が強かったかしら……?)

 どうにも気恥ずかしくて、美空は彼に背を向けた。

「それじゃあ寝ましょうか。おやすみなさい」
「おやすみ」

 美空も部屋に戻りベッドに潜り込むと、身体がじんわりとベッドに沈んでいく。さっきまで消えかかっていた眠気が息を吹き返した。

(あ……寝れそう)

 そう思った時には、もう眠りについていた。

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