似た者同士の契約婚 ~結婚しないと宣言した日に出会った相手は、不眠の心臓外科医でした~
 電話の声が遠くに聞こえる。

(なんで急に?)

 困惑したまま救急車を呼び、洋介の様子を再び確認する。

「……余計な、ことを……するな!」

 洋介は呻きながら、美空を追い払うように腕を動かしていた。

「余計なことかもしれないけど、目の前で人が倒れたら救急車は呼ぶものよ。私のことは気にしないで」
「うるさい………うぅ、クソッ」
「とにかく、地面は冷えるから、ここ使って」

 美空は自分のバッグを地面に置き、その上に洋介を座らせる。
 壁に寄りかかって座り込んだ彼は、ただ美空を見ていた。

「俺なんか、放っておけ、よ……」
「私がそんなに薄情に見える? まあ、貴方から見ればそうかもしれないけど」
「……うぅ、何で、こうなっちまうんだ……俺は、お前が好きだった……。でも、俺より仕事熱心なお前、見てると、自分がクソみたいで……うぅう……」
「もう喋らない方が良いわ」

 洋介の服を緩めるべきか考えながら、受け答えをしていると、人影が近づいてきた。

「美空!」
「……優斗さん!? どうしてこんなところに?」

 美空が優斗を呆然と見つめていると、彼は洋介を見て表情を険しくした。

「美空が心配で……そんなことより彼はどうしたんだ? 救急車は呼んだ?」
「はい」

 優斗は洋介に近づくと、じっと彼を見つめた。

「胸が痛むのか? どこまで痛みがある?」
「うる、せえ……お前の、さしずは……う、受けない」

 洋介が顔を背け、自分の心臓を押さえる。

「今はそんなこと言っている場合じゃないだろう。美空、彼が倒れてから何分だ?」
「えっと、十分くらいです」

 美空が答えるとの同時に遠くからサイレンが聞こえてくる。
 あっという間に近づいてくる音に、美空はほっと胸を撫で下ろした。

「来ましたね」
「あぁ、俺も同乗しよう」

 洋介は呻きながら、涙を流していた。

「うぅ……くそっ、なんで、助けるんだ……俺は……どうして……」



 結局、洋介はあかつき総合医療センターに運ばれ、優斗によって処置をされた。



< 62 / 66 >

この作品をシェア

pagetop