御曹司社長は恋に臆病な契約妻を極上の愛で囲う
 そうだと分かった途端、小夜莉はさらに顔を熱くした。きっと今の自分はメイクでもカバーしきれないくらい火照った顔をしていると思う。

「まぁ、そういうことだ」

 すると雅人が照れ隠しするように、自分の頬を指でなぞる。そんな姿に小夜莉の胸はキュンと高鳴った。
 その時、コンコンと再びノック音が響き、会場のスタッフが頭を下げながら現れた。

「そろそろ開始のお時間です」

 恭しく頭を下げるスタッフの姿を見た途端、雅人の表情が急に変わる。一気に御子柴の御曹司の顔つきになった雅人からは気後れしそうなほどのオーラが放たれている。雅人はそんな小夜莉を気遣うように、そっと腕を差し出した。

「小夜莉を大勢の前に出すのは気が進まないが、しょうがない。腕にはつかまれるか?」

 優しい雅人の声に小夜莉は恥じらうように「はい」とうなずく。そろそろと手をのばして雅人の腕に自分の腕を絡めた。

(どうしよう。ドキドキしちゃって顔があげられない……)

 触れた手のひらから、雅人の体温が伝わってくる気がする。
 するとうつむく小夜莉を心配したのか、雅人がそっと顔を覗き込ませた。

「無理はしないで」

 眉尻を下げる雅人の顔が目の前に見えて、小夜莉はさらにドキッと心臓を跳ねさせる。こんなに近くで雅人に見つめられたら、思わず倒れてしまいそうだ。

「だ、大丈夫です。今は落ち着いてますから」

 でも小夜莉はわざと淡々とした声を出すと、本当は鳴り響いてうるさいほどの胸元をぐっと押さえた。

「じゃあ行こうか」

 雅人の低い声が響き、小夜莉は気を引き締めるとパーティー会場へと向かった。
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