御曹司社長は恋に臆病な契約妻を極上の愛で囲う
「私は大丈夫ですので、お父様のところへ行ってください」
小夜莉の声を聞くと、雅人は安心したようにうなずいて会場の真ん中へと歩いて行った。
しばらくご婦人たちと会話をする。どうも彼女たちは御子柴グループと取引のある企業の社長夫人たちのようだった。
「あら、吉野社長」
するとその内のひとりが急に華やいだ声を出す。見ると黒いタキシードを着た紳士風の男性が、にこやかにこちらへやってくるのが見えた。男性は六十代くらいだがとても背が高くスマートで若々しさを感じる。
誰だろうと小夜莉が不思議そうに見ていると、隣のご婦人がそっと顔を寄せた。
「吉野製薬の社長さんですのよ」
「吉野製薬!」
あまりに有名な企業名に思わず声が出てしまう。小夜莉は目を丸くすると吉野の姿をそっと眺めた。
吉野はにこやかにこちらにやってくると、顔見知りのご婦人たちと挨拶を交わしだした。
「吉野社長は海外生活が長かったからか、とっても紳士的でファンが多いのですわ」
そう言いながら吉野の前に出る女性の姿を見て、小夜莉は一気に全身を硬直させる。吉野はご婦人たちひとりひとりの手を取ると、右手の甲にそっとキスを落としているのだ。
海外生活が長い吉野のこの行為は、もうみんな周知のことのようで、順に恥じらうように手を差し出している。でも小夜莉にとってはあの行為は恐怖でしかない。
小夜莉の声を聞くと、雅人は安心したようにうなずいて会場の真ん中へと歩いて行った。
しばらくご婦人たちと会話をする。どうも彼女たちは御子柴グループと取引のある企業の社長夫人たちのようだった。
「あら、吉野社長」
するとその内のひとりが急に華やいだ声を出す。見ると黒いタキシードを着た紳士風の男性が、にこやかにこちらへやってくるのが見えた。男性は六十代くらいだがとても背が高くスマートで若々しさを感じる。
誰だろうと小夜莉が不思議そうに見ていると、隣のご婦人がそっと顔を寄せた。
「吉野製薬の社長さんですのよ」
「吉野製薬!」
あまりに有名な企業名に思わず声が出てしまう。小夜莉は目を丸くすると吉野の姿をそっと眺めた。
吉野はにこやかにこちらにやってくると、顔見知りのご婦人たちと挨拶を交わしだした。
「吉野社長は海外生活が長かったからか、とっても紳士的でファンが多いのですわ」
そう言いながら吉野の前に出る女性の姿を見て、小夜莉は一気に全身を硬直させる。吉野はご婦人たちひとりひとりの手を取ると、右手の甲にそっとキスを落としているのだ。
海外生活が長い吉野のこの行為は、もうみんな周知のことのようで、順に恥じらうように手を差し出している。でも小夜莉にとってはあの行為は恐怖でしかない。