御曹司社長は恋に臆病な契約妻を極上の愛で囲う
「まぁ小夜莉さんったら可愛らしい。そういう所が雅人さんのハートを射止めた理由かしら?」
「え?」
「あのね、使い方は簡単ですのよ。ベッドに入る前に一滴、胸元につけるだけですから」

 美幸は意味深にそう言うと、にっこりと口元を引き上げる。

「あの、それって……」

 小夜莉が戸惑いながら口を開いたとき、コンコンと扉をノックする音が響いた。

「奥様、そろそろ会場までお戻りくださいと雅人様よりご伝言です」

 その声を聞いた途端、美幸は小夜莉よりも先にパッと立ち上がる。

「お時間を取らせてしまい申し訳ないわ。では、私は会場に戻っておりますわね」

 さっと身をひるがえす美幸に、小夜莉は慌てて立ち上がると丁寧に頭を下げる。

「いえ、こちらこそ。素敵な贈り物をありがとうございました」

 そう言って頭を上げたときには、もう扉はばたんと閉じ、美幸の姿はなくなっていた。
 小夜莉は美幸が出て行った扉をじっと見つめる。何かが自分の心に引っかかっている。

 美幸は非売品のプレゼントだから、わざわざ控室まで渡しに来たのだろうか? 終始にこやかで感じはよいが、本心を悟られないようにと隠している顔にも見えた。
 でもそんな小夜莉のモヤモヤした感情も、再びコンコンと鳴るノック音にかき消される。

「とりあえず、すぐに戻らないと」

 気を取り直した小夜莉は、手渡された小瓶を鞄にしまうと、急いで会場へと戻ったのだ。
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