御曹司社長は恋に臆病な契約妻を極上の愛で囲う
 小瓶を回して見ていると、ふと瓶の底に張られたラベルにやや隙間が空いているのを見つけた。不自然な様子に違和感を覚えた雅人は、ラベルをはがした途端、中から出てきたものに息をのむ。

(これはGPSのタグ……)

 目を疑うような小さなチップの存在に、背筋を冷たいものが流れていく。
 NKRはここ数年で急拡大している企業だ。父とも懇意にしているようで、雅人と美幸の縁談は先方からの強い希望があったと後から聞いた。でもその話は、雅人が小夜莉を連れて行ったことで破談になっている。

(まさか、小夜莉に何かしようとしている?)

 雅人ははっと立ち上がると小夜莉の部屋のある方を振り返る。小夜莉は寝てしまったのだろうか? 静まりかえっており物音ひとつ聞こえない。

(まだ今は小夜莉には言わない方がいいかもしれない。無駄に怖がらせるのは良くないだろう)

 パーティーの時にもらったと言っていたことを考えると、すでに二週間は経っている。相手の目的が雅人の自宅の特定なのであれば、すでに情報は握られているだろう。

(何が目的だ?)

 雅人が眉をひそめたとき、スマートフォンが着信を告げる。電話は司からだ。

「もしもし」

 低い声で電話に出た雅人の耳に、やや緊迫したような司の声が響く。

「やっぱり雅人の読み通り、研究所の所長とNKRがつながっているかも知れない」

 その言葉に雅人は小さく息をのむ。事態は急速に動いているのだろうか。

「詳しく聞かせてくれ」

 表情を硬くした雅人は、小夜莉の部屋が静かなのを確認した後、すぐに自分の部屋へと戻った。
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