傷付いた心を癒すのは 〜男性が苦手な私の心を癒してくれたのはお隣さんでした〜

 ◇


「ごめんなさーい。仕事が終わらなくってぇ……。でも先輩、今日は飲み会に参加しないから、いいですよね?」

 定時頃、そんなことを言って私に泣きついてきたのは井上さんだった。
 今日中に処理しなければならない提案書がまだ完成しきっていないとのことで押し付けられたのだ。
 さすがにこれには苛立ったけれど、生憎みんな飲み会に参加してしまうし、後輩の不手際は先輩の責任でもある。
 リーダーは水嶋にばかり負荷をかけられないと言って、彼女も手伝うと手を挙げてくれたけれど、私は大丈夫ですと断った。

「いえ、これくらいであれば大丈夫ですよ」
「しかし……」
「さすが先輩♡」
「こら、井上! いい加減にしないと、さすがに私でも井上の不手際を庇いきれない」
「すみません。なにも先輩に丸投げするのではなく、私も一緒に作業するつもりです。ただ、先輩にちょっと手を貸していただくだけで。それに納期は絶対ですよね?」

 そんなふうに言われたらリーダーも何も言えなくなってしまう。
 二人でしっかり済ませるように言われ、私は飲み会会場へと移動していく人たちを横目で見ながら彼女と共に手を動かし始めた。

「井上さん。こういうのは早めに言ってちょうだい。もし、私に予定があって手伝えなかったらどうするつもりなの?」
「え、先輩に予定なんてあるんですか?」
「……」

 本当に失礼な言い草だ。
 あなたには友人も恋人もいないでしょう、と断定するような言い方にふつふつとした怒りが湧いてくる。
 だけどここで真面目に取り合ってはダメだ。彼女は基本的にこういう性格なのだから。

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