傷付いた心を癒すのは 〜男性が苦手な私の心を癒してくれたのはお隣さんでした〜
◇
「あ、水嶋さん、待って……!」
次の日の朝、エレベーターに乗り込むと、前方から手を振って走ってくる片瀬さんが見えた。
慌てて開くボタンを押して、息を切らしてやってきた片瀬さんを迎え入れる。
今日は珍しくゆっくりとした朝だったようで、彼の後ろ髪が跳ねていた。
「珍しいですね、この時間に出勤なんて。いつもは鉢合わないのに……」
「今日、寝坊しちゃって……いつもはなるべく早く出社するようにしてるんですけど……」
ぴょんぴょんと跳ねる後ろの髪を押さえて笑う彼に、仕事においては完璧な彼でも、そんな日があるのだなぁと親近感が湧く。
それから閉じるボタンを押しても扉が一向に閉まらず、彼は呑気に「壊れたのかな?」と呟いた。
「片瀬さん、その、鞄が……」
「あぁ! ごめん、俺のせいか……」
何度閉じかけても開くのは彼の鞄の角が挟まっていたからだ。そうとは知らずに、何度も閉じるボタンを押す彼にクスクスと笑みを零してしまう。
オフの彼は抜けているところも多くて、そうした瞬間を垣間見るたびに可愛く思えた。