傷付いた心を癒すのは 〜男性が苦手な私の心を癒してくれたのはお隣さんでした〜
 私たち兄妹は幼い頃に父を亡くした。そのため母は朝から晩まで働き詰めで、あまり家に居ることがなかった。
 当時はまだ健在していた祖父母も体が悪く、遠方に住んでいたため頼ることができなかった。だから、私と兄はいつも狭いアパートの一室で二人ぼっちだった。

 だけど、私は兄と二人ぼっちであることを悲観したことは一度もない。

 兄は父親のように広い心で私に接してくれていたし、どこへ行くにも私を邪険にすることなく連れて行ってくれた。
 実際、子ども二人で行ける場所は少なく、せいぜい近くの公園や図書館に足を運ぶ程度だったけれど、兄に手を引かれて歩いた真夏の歩道橋の暑さを今でもよく覚えている。

 そんな兄と私の間に入ってきたのが剛人だった。
 ある日、兄が小学校の友人だと言って家に連れてきたのだ。

 最初は意地悪ではなかった……ように思う。遥か遠い記憶すぎて鮮明に思い出せないけれど、出会った当時は三人で遊んでいた。
 しかし、ある日を境に剛人の態度が急変し、私に意地悪するようになった。

 それどころか私の存在を邪魔だといい、いい加減兄から離れろと言うようになった。
 どうしてそんなひどいことを言うのかと泣いて、部屋に籠ろうとしたけれど狭いアパートの一室に逃げ場などない。
 いつも剛人から意地悪をされ、気付けば男性全般が苦手になっていた。

 剛人とは学年こそ違うものの中学も同じで、やっと高校で離れられたと思っても、いつも兄の傍にいた。
 だから、兄が大学生になり、手狭になるからとやっとアパートを出たタイミングで、私は剛人から解放された。

 だけど、一度植え付けられた恐怖心は拭えず、また兄がちょくちょく剛人を連れて帰ってくるものだから、そのたびに私は逃げるように家を飛び出していた。
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