クソ真面目なアイドルに、幼なじみの一途が重症です。
「……ふざけんな」
怒りでどうにかなりそうな、でも苦しそうに吐き捨てられた言葉。
その声に自然と体がビクつく。
暁の顔には、まるで彼自身が深く傷つき、耐えきれない痛みを感じているような、ひどく歪んだ表情を浮かべていた。
「あ、き……?」
「……なんで。なんで、お前がそんな目にあわなきゃなんねえんだよ……っ!」
暁は呻くように言うと、ベッドの上に膝立ちになり、私の両頬を両手でガシッと掴んだ。
そして、彼の親指が、私の唇に強く押し当てられた。
「んっ……!」
ゴシゴシ、ゴシゴシと。
まるで、私の唇にこびりついた「他の男の痕跡」を削り落とそうとするかのように、乱暴に、何度も何度も唇を拭われる。
「あ、き……いた、い……っ」
「……クソ……っ腹立つ…」
私の唇を乱暴に拭う彼の指が、小刻みに震えていた。
至近距離で見つめ合う漆黒の瞳には、薄っすらと涙の膜が張っているように見えた。
『(俺がお前を守るはずだったのに。俺が、あんな男からお前を遠ざけておけばよかったのに)』
言葉には出していないけれど、彼の「泣きそうな顔」が、痛いほどにそう叫んでいた。
怒っているのは私に対してじゃない。
私を傷つけた大輝くんへの腹立たしさと、私を守りきれなかった「自分自身」への激しい怒りだ。
「……暁……ごめん、なさい……っ。私が、バカだったから……暁の言うこと、聞いてれば……っ」
私の目から再びボロボロと涙が溢れ出すと、暁はハッと我に返ったように手の力を緩めた。
「……っ!違う!…ごめんももっ………あーーーもう!!」
暁は少し赤く腫れてしまった私の唇を、今度は羽のように優しく指の腹でなぞり。
そのまま、崩れ落ちるように私を抱きしめ、私の首筋に深く顔を埋めた。
「……アイツ、絶対に許さねえ。」
私を抱きしめる彼の腕は、折れるんじゃないかと思うほど強くて、熱かった。
そして、触れてる暁の身体が微かに震えている事に気付く。
私が傷付けられた事で、暁がこんなに苦しんでる。
その震える背中を不器用にお返しに、撫でることしかできない。
そんな暁の姿に、自分がしてしまった事を深く後悔したのだった。