再会ロマンス~幼なじみの甘い溺愛から逃げられない~
プロローグ
会議室に弁当を届けに来ていた女性を見た瞬間、息をのんだ。
見間違えるはずがない。
少し長くなった髪も、大人びた雰囲気も、あの頃とは違う。
それでも、分かってしまった。
夏木美桜――。
十二年間、一度も忘れたことのない名前。
もう二度と会えないと思っていた相手が、今、目の前にいる。
心臓が早鐘を打つ。
だが、彼女は俺に気づくことなく、弁当を並べ終えると会議室をあとにした。
その背中を見つめたまま立ち尽くす。
声をかけるべきか。
いや、俺にはそんな資格なんてない。
あの日、美桜を傷つけたのは俺だ。
忘れられていても当然だし、顔も見たくないと思われていても仕方がない。
それでも、このまま見送ればきっと後悔する。
十二年前と同じように。
気づけば、俺は会議室を飛び出していた。
「ねぇ、君。ちょっと待って」
振り返った美桜と視線がぶつかる。
だが、その瞳に浮かんでいたのは、驚きではなく戸惑いだった。
「……美桜だろ、夏木美桜」
「そうですけど……あなたは?」
その言葉が胸に突き刺さる。
忘れられているのかもしれない。
自業自得だと分かっていても、苦しかった。