再会ロマンス~幼なじみの甘い溺愛から逃げられない~
斉藤さんがゆっくりと私に向き直った。
「ナツキさん……僕が気づかないうちに不快な思いをさせていたみたいで、本当に申し訳なかった。でも、君の言葉に救われたのは本当なんだ。それだけは伝えたくて……」
斉藤さんは深く頭を下げた。
怖かった記憶は、簡単には消えない。
でも、彼の声には後悔が滲んでいるように感じた。
私はなんて返せばいいのか分からず、小さく頷くことしかできない。
「さっきは乱暴に腕を掴んでしまってすみませんでした。もう迷惑をかけるようなことはしないと約束します」
「……分かりました。私もバッグをぶつけてごめんなさい」
少し迷って、私はそう答えた。
「あれは完全に僕が悪かったので、気にしないでください」
斉藤さんは小さく頭を下げると「それでは」と言って車に乗り込んだ。
車は静かに駐車場から出ていき、その姿が見えなくなると、私は大きく息を吐いた。
張り詰めていたものが一気にほどけた気がする。
車に乗せられそうになったときは、本当に怖かったし、これからどうなるんだろうという不安しかなかった。
そんな中、土壇場でよくバッグをぶつけたなと、自分でも驚く。
最終的に、テツの言葉が斉藤さんの心に響くとは思わなかったけど。
彼が自分の間違いを認め、謝罪してくれたことで、胸につかえていたものが少しだけ和らぐ。
でも、斉藤さんのことを完全に許すことはどうしてもできない、というのが私の正直な気持ちだった。