再会ロマンス~幼なじみの甘い溺愛から逃げられない~
その日の夜、仕事を終えて駅へ向かう。
店から最寄り駅までは徒歩で十分ほど。
そこから電車で一駅、さらに自転車で五分ほどでアパートに着く。

今日は早番だったので、十八時半には店を出た。
この時間帯は、歩いていると仕事帰りの人たちとすれ違う事が多い。

駅が目前に見えたところで、バッグの中のスマホが震える。
立ち止まってバッグの中を漁り、スマホを取り出すと、画面には『テツ』の名前が表示されていた。

連絡先を交換してから、毎日のようにメッセージが送られてくる。
その中で、テツはよく、私の仕事終わりの時間を気にしていた。

『遅いと帰り道とか心配だろ』と。

ちょっと過保護すぎるんじゃないかと思うほどだ。
何年もこのスタイルでやってきているのに、急に心配されるのはむず痒い。

そういえば、テツはあの夜のことを話題に出さなくなっていた。
順番が逆だったことを気にしているのか、あの出来事を一度リセットして、最初から関係を築き直そうとしてるようだった。
会話の端々で、私との距離を縮めようとする意図が滲んでいる。

テツの不器用なくらい真っ直ぐな態度に触れるたび、心が揺れた。
私も、ちゃんと向き合うべきなのかもしれない。

それより、なんの用だろう。
電話に出ようとした、そのとき。

「あの……」

雑踏の中に、男性の声が耳に届いた気がした。
でも、次の瞬間には周囲の音にかき消されてしまう。
気のせいかもしれないと思いながら、電話に出た。
< 44 / 245 >

この作品をシェア

pagetop