再会ロマンス~幼なじみの甘い溺愛から逃げられない~
「僕、気に入ったお店があったらそこばかり通いたくなるんです。これだと思ったら、他のものが一切目に入らなくなって、周りから『お前は一途だな』とよく言われてます。この店も気に入ったので、これから頻繁に通うと思います」
返答に困ることを言わないで欲しい。
愛想笑いを浮かべるのも疲れてきた。
一途とか、どうでもいい情報で私には関係ない。
気に入ったなら、好きに通えばいい。
それより、この人はいつまで話しかけてくるんだろう。
「あっ、すみません。あなたを見かけて嬉しくなって、つい長く話してしまって」
「いえ……」
「あの、お名前だけでも教えてもらっていいですか? 僕は斉藤一馬と言います」
どうして名前を言わないといけないんだろう。
やっと解放されるかと思ったら、まさかの展開に戸惑った。
惣菜屋の店員と客、ただそれだけの関係なのに。
「夏木です」
渋々、名字だけ名乗る。
「ナツキさんですか! 可愛い名前ですね」
可愛い?
もしかして私の苗字を名前だと勘違いしたのかな。
まぁ、どうでもいいか。
そのあとも、やたら楽しそうに話し続けていたけど、営業スマイルのまま適当に受け流した。
「また、お店に行きますね。それじゃあ失礼します」
軽く会釈し、斉藤と名乗った男性は少し離れたカウンター席に移動した。