無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
***
鈴川と並んで歩きながら、幹人は無意識に自分の指先を握りしめていた。さっきまで、そこにべつの温度が残っていた気がして。
「あ、べつに堅い話じゃないからな」
前を歩く鈴川が肩越しに振り返り、思い出したように言う。
「春から設計部に来る前提でさ。今のうちにルールとか癖とか、軽く頭に入れとけって話」
「はい」
幹人が入社するまで、あともう少し。時間は思っているよりずっと速く進む。
(総務、あと三カ月もないんだよな)
そう思った瞬間、倉庫で見た天音の横顔が、勝手に浮かんだ。棚を見つめたまま、少しだけ困ったように視線を逸らした顔が。
仕事中にふと彼女を探してしまう癖や、何気ないひと言に必要以上に揺れる気持ちが続いていた。距離が近づけば落ち着かなくて、離れれば理由もなく気になる。
そんな感覚に、ずっと名前をつけずにきた。でも、気にしないふりをするにはもう遅い。
この頃ようやく、それが恋心のせいだと気づいた。
鈴川と並んで歩きながら、幹人は無意識に自分の指先を握りしめていた。さっきまで、そこにべつの温度が残っていた気がして。
「あ、べつに堅い話じゃないからな」
前を歩く鈴川が肩越しに振り返り、思い出したように言う。
「春から設計部に来る前提でさ。今のうちにルールとか癖とか、軽く頭に入れとけって話」
「はい」
幹人が入社するまで、あともう少し。時間は思っているよりずっと速く進む。
(総務、あと三カ月もないんだよな)
そう思った瞬間、倉庫で見た天音の横顔が、勝手に浮かんだ。棚を見つめたまま、少しだけ困ったように視線を逸らした顔が。
仕事中にふと彼女を探してしまう癖や、何気ないひと言に必要以上に揺れる気持ちが続いていた。距離が近づけば落ち着かなくて、離れれば理由もなく気になる。
そんな感覚に、ずっと名前をつけずにきた。でも、気にしないふりをするにはもう遅い。
この頃ようやく、それが恋心のせいだと気づいた。