無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 仕事ができて、周りをよく見ていて、いつも一歩引いた場所にいる。その場所に、幹人はなぜか安心感を覚えてしまうのだ。深く考えもせずに突っ走ってしまう幹人にとっての〝デフォルト〟。羽を休められるセーフティーゾーンとでも言おうか。
 そのくせ、無難で安定した選択を選び、その裏で少しだけ息苦しそうにしている彼女に、違う世界を見せたいとも願っている。
 人と深く関わらずに生きてきた幹人にとって、誰かのためになにかをしたいと思ったのは初めてだった。

 (いい返事、待ってます、って言ったけど)

 待てる立場なのかどうか、ふとわからなくなる。
 天音が〝付き合う〟意味を取り違えたときには焦った。わざとそう仕掛けたのではなく、純粋に初詣に誘ったつもりだった。
 そのときの彼女の反応を見れば、自分は恋愛対象として見られていないとわかる。普通に考えて、学生の幹人は彼女の眼中にない。心の準備もないまま、その事実を否応なく突きつけられる展開に繋がったのは誤算だった。

 早く社会人になって、天音と対等になりたい。そう思う反面、総務部にいられる期間が短くなっていくことに焦燥感が募っているのも事実である。

 「ところで、あんな場所でなにしてたんだ?」
 「なにって仕事です」
 「へえ、仕事ねぇ。ずいぶん熱心だったじゃないか」

 含みを持たせた声に、幹人はわずかに眉を動かす。

 「備品整理です」
 「ふうん」
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