無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 「大丈夫ですか」
 「だい、じょうぶ、だけど……」

 言い終わる前に、彼の手が伸びてくる。

 「掴まってください」
 「え?」

 拒む間もなく、指先が触れた。ぎゅっと握られ、引き上げられる。
 その拍子に彼と同じ段に上がり、そのまま手を引かれて、さらに上がっていく。
 幹人は、当然のようにそのまま歩き続けていた。
 階段に集中しようとしても、意識がどうしてもそこに向いてしまう。振り解こうと思えばできるのに、そうしない自分がいた。

 「無理しないで。ゆっくりでいいです」
 「……ありがとう」

 声が少しだけ上ずった気がした。
 階段を上り終えると同時に、ごく自然に手が離れる。指先から、すっと温度が引いていった。
 ほんの数秒前まで繋がっていた感覚が嘘みたいに消えて、急に足元が心許なくなる。

 (……あ)

 名残惜しい、と思ってしまった自分に気づいて小さく息を詰めた。
 幹人は何事もなかったように前を向いている。さっきまで手を取っていたことすら、特別じゃなかったみたいに。
 ようやく境内に辿り着き、参拝を終えて、おみくじの前に立つ。
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