無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 「俺、今日はどうしても抜けられなくなって」

 嫌な予感が胸に広がる。

 (これはちょっとまずい状況かも……)

 鈴川のほうを向いたまま、じりじりと後退していく。

 「寺崎、もう帰り?」
 「あ、うん……」
 「じゃあさ」

 鈴川はぐっと距離を詰めてきた。

 「頼む。これ、アイツんち届けてくれ」
 「え?」

 聞き返す暇もなく、コンビニ袋が手に押しつけられた。中でカサ、と音がする。

 「いや、無理だから」
 「大丈夫大丈夫。渡すだけ。五分で終わる」
 「時間の問題じゃなくて」
 「助かる!」

 勢いだけで押し切られ、天音は言葉を失う。

 「場所、わからないし」
 「今送る!」

 鈴川はそう言いながら素早くスマートフォンをポケットから取り出し、操作をはじめた。 間もなく、天音の画面が震える。
< 139 / 251 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop