無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 【加地の住所】

 その後に表示された文字列を見た瞬間、鼓動が乱れた。

 「……私、行くって言ってませんけど」
 「でも断らないだろ?」

 ニヤッと笑われて、反論が詰まる。まるでお見通しみたいに目が光った。

 「じゃ、よろしく! ほんと助かる!」

 そう言い残し、鈴川は足早にエレベーターへ向かっていった。
 エントランスにひとり残され、天音は手の中の袋とスマートフォンを交互に見下ろす。

 (なんで、こうなるの)

 画面に表示された住所を見てため息を漏らす。帰るだけだったはずの月曜日は、思いがけずべつの方向へ動きだしていた。

 送られてきた住所を地図アプリに打ち込み、天音は最寄り駅から歩きだした。
 アプリが示したのは、住宅街の中にある築年数のありそうなアパートだった。二階建てで、無駄な装飾のない外観。オートロックもなく、家賃と利便性を優先したような佇まいが、ひとり暮らしの若い人らしい。

 (ここに、ひとりで……)

 階段を上がり、教わった部屋番号の前に立つ。手に持ったコンビニ袋が、やけに重く感じられた。
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