無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 足を止める。彼は同年代くらいの女性と並んで歩いていた。距離は近すぎず、遠すぎず。買物袋を持って、なにか話しながら自然に笑っている。
 女性のほうが少しだけ彼のほうへ身を寄せて話しながら、幹人の腕に視線を落として小さく笑った。なにか言って、幹人の袖口を軽くつまむような仕草をする。
 幹人は一瞬戸惑ったように視線を泳がせて、それから苦笑いを浮かべる。でも、振りほどこうともしない。
 胸の奥が、すっと冷えた気がした。

 「なに、どうかした?」

 理世が天音の視線を辿っていく。

 「……もしかして、例のインターン?」

 天音の表情で気づいたらしい理世に頷く。

 「へえ、たしかにイケメンだ」

 幹人は一瞬こちらを見たような気もしたが、そのまま女性と並んで角を曲がっていく。
 彼には彼の世界がある。当然ながら、それは天音の知らない世界だ。
 天音が見ていたのは、彼のほんの一部分。思い返せば、職場でだってずっと一緒にいたわけではない。
 看病した夜のことが、急に現実味を失っていく。あれは特別な時間だったけれど、特別な意味を持たせていたのは自分だけだったのかもしれない。

 「ただの同級生じゃない?」

 理世が気を遣うように言う。
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