無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 「現実じゃ、だいたい〝譲る〟と同じなんだよ。相手の都合が整うまで、とか。自分が追いつくまで、とか。そうやって様子見してるうちに、タイミングは平気で他人に拾われる」

 言葉は静かだが、容赦がない。

 「だからな」

 鈴川は箸を置き、幹人を真っすぐ見た。

 「タイミングは奪うもんだ」

 胸の奥が、どくんと鳴った。

 「正々堂々待ってりゃ、いつか順番が回ってくるなんて思ってたら、社会出た瞬間に詰む」

 鈴川は苦笑して、肩をすくめる。

 「俺も昔、そうなる寸前だったからな」
 「……でも」

 幹人はかすれた声で口を開く。

 「俺、まだ学生で。立場も」
 「わかってる」

 被せるように言われて、言葉が止まる。

 「奪うってのは、無理やり抱きつけって話じゃねぇよ」

 鈴川は少しだけ声を落とした。
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