無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 幹人が苦笑するのを見て、天音はようやく状況を理解した。
 このふたりは、最初から全部お見通しだったのだ。

 「私は大っぴらにしてもいいと思ってるんだけど、昂大が今はまだって言うの」
 「十和子はマネジャーだけど、俺はまだなんの肩書きもないだろ? 胸を張って〝十和子は俺の女だ〟って言えるようになるまでね。まぁ、そう遠くない未来だ。なんせ、この俺だから」

 鈴川は親指で自分を指し、自信満々に胸を張った。
 ふたりが下の名前で呼び合っているのが自然で、とてもいい関係なのだとわかる。

 「まぁだから、加地が四月までって躊躇する気持ちは、痛いほどわかったってわけ。けど、それで手遅れになったら元も子もないだろう?」
 「だから、タイミングは奪うものだって」

 鈴川の言葉を幹人が続けた。

 「そう。ぐずぐずしてたらお見合いしちゃうからな」

 どこでどう気持ちが漏れていたのか自覚はないが、天音は杉村に、幹人は鈴川に、それとなく背中を押されていたようだ。

 「ともかく、改めて」

 杉村がグラスを持ち上げる。

 「寺崎さんと加地くん。おめでとう」
 「加地、よく頑張ったよな」

 グラスが触れ合い、軽い音が響く。
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