無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 声にならない息が漏れる。
 驚きと安心と、鼓動の速さ。それら全部を包むように、幹人は強すぎない力で抱きしめた。
 そして、少しだけ躊躇ってから……唇が触れる。一瞬で離れたけれど、それで十分だった。

 「びっくり、させないで……」

 どう反応したらいいのかわからない。そう言った声は震えていた。

 「それじゃ次は、聞いてからにする」
 「そんな……いちいち聞かなくてもいいから」

 恥ずかしくて目を逸らすなんて、二十八歳にしては純情すぎる反応だと自分で思う。でも、どうしようもなく鼓動が速くて、ものすごく照れくさい。

 「いつでもいいなら」

 もう一度唇が重なった。今度はさっきよりも長く、最後に軽く食んでから離れた。

 「も、もうっ」

 完全に翻弄されている。天音が胸元を軽く押すと、幹人は素直に一歩下がった。けれど、すぐに困ったように笑う。

 「ごめん。……でも、天音さんが可愛すぎて」
 「そういうこと、さらっと言わないで」

 頬に手をあてる。熱が引かない。冬の夜風のはずなのに、顔だけがやけに熱かった。
 視線を逸らしたまま、息を整える。
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