無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 握るでもなく、逃がさないでもない、けれどたしかに繋がっている感触だ。
 反応が追いつかないまま、心臓だけが跳ねた。
 不意打ちすぎる。けれど、振りほどく理由はどこにもない。天音は息を整え、そのまま指を絡める。隣で幹人が微笑んだような気がした。
 さっきの飲み会のこと、仕事のこと、次の休みのこと。ぽつぽつと取り留めのない話を繋ぎながら、電車は郊外へと進んでいく。

 降車駅に着くと、ふたりは自然に手を繋いだままホームを歩いた。
 改札を出て、住宅街へ続く道。街灯の下、静かな夜。砂利を踏む音と、ふたり分の足音だけが並ぶ。

 「思ったより静かですね」
 「この時間は特に」

 そんな他愛もない会話を交わしながら、あっという間に天音の家が見えてくる。
 門の前で立ち止まり、天音は名残惜しさを押し込めるように言った。

 「じゃ、またね」
 「うん」

 手を離し、踵を返したそのときだった。

 「天音さん」

 唐突に名前を呼ばれ、振り向くより早く手首を掴まれた。
 軽く引き寄せられ、そのまま幹人の腕の中へ。

 「……っ」
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