無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 年齢も立場も、今が大事な時期だということも、よくわかっている。
 その予想を裏づけるように、幹人は少し照れたように笑った。

 「結婚かぁ……」

 ワイングラスを傾けながら、ぽつりと言う。

 「なんだか、遠い世界の話みたいです」

 ああ、やっぱりと胸の奥で小さく息を吐く。

 「……そうよね」

 軽く笑って相槌を打つ。

 「幹人くんは、今は仕事が第一だもんね」

 その言葉がどこまで本音で、どこまで自分を納得させるためのものなのか。天音自身にもはっきりとはわからない。
 ただ、窓の外に広がる夜景だけが、変わらずきらきらと瞬いていた。
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