無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 「……そういう言い方、ずるい」

 抗議のつもりでも、声は思ったより小さく震えていた。
 それを見逃さず、幹人の口元がわずかに緩む。

 「俺、ずるいですよ」

 耳元に近づいて囁く。

 「天音さんがどんな顔するか、わかって言ってるから」

 息がかかるほどの距離が、思考を止めにかかる。年齢も将来の不安も、今は全部脇に置いていい気がした。
 唇が重なり、キスが深まる。そのまま倒れ込むようにしてベッドに横になった。
 背中に回された幹人の腕は強く抱き寄せるでもなく、離すつもりもないという曖昧な力加減で。

 「大丈夫ですか」

 至近距離で囁かれる声は、さっきまでの独占欲を孕んだ低さとは違って、ひどく優しい。

 「そんなこと、今聞くんだ」

 天音が苦笑すると、幹人は少しだけ困ったように眉を下げた。

 「天音さんが一番大事だから」

 急かさない。奪わない。それでも、たしかに欲しているのがわかって胸が熱い。
 天音は、そっと彼のシャツの裾を掴んだ。
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