無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 「楽しそうだったから、すごく。で、誰」
 「あれは……昔付き合ってた人。と言っても、退屈だってすぐに振られたから」

 たしか幹人にも話したことがある。

 「元彼ってわけですね」
 「そう、だね」

 幹人は一度だけ小さく息を吐いてから、天音の顎にそっと指をかけた。

 「過去なのはわかってます。でも正直、気分よくない」

 視線を合わせたまま、低く言う。指先がほんの少しだけ力を増した。

 「今、天音さんに触れていいのは俺だけだって思ってるんで」

 その言葉に鼓動が弾む。
 顎に触れた指先は熱を帯びていて、逃げようとすれば簡単にできるはずなのに、身体が言うことをきかない。
 近すぎる距離。視線を逸らしたいのに、幹人の目が離してくれない。

 「そんな顔されると、余計に独占したくなる」

 低く抑えた声に、鼓動が暴れだしてもう制御できない。
 年下のはずなのに今の幹人は完全に〝男〟で、余裕のない天音のほうが視線を逸らす。
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