無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 「加地、次の案件、確認入ったぞ」
 「はい、すぐ行きます」

 立ち上がりながら、幹人は思う。
 まだ答えは出ていない。でも、考えないままでいられる距離じゃなくなった。
 〝彼女の隣に立つ〟という言葉が、仕事だけを指すものじゃないと気づいてしまった以上、もう遠い世界のままではいられない気がしていた。


 夕方、設計部のフロアが少しざわつきはじめた頃だった。資料を抱えて立ち上がろうとした幹人に、鈴川が声をかける。

 「加地、これ一緒に見てくれるか」

 打ち合わせスペースに移動し、図面を広げながら数分。ひと通り確認が終わったところで、鈴川がふっと息をついた。

 「助かった。……で、どうした?」
 「え?」
 「さっきから、仕事してる顔じゃない」

 図星だった。
 誤魔化すように視線を落とした幹人に、鈴川は肩をすくめる。

 「まあいい。俺も人のこと言えないしな」

 一瞬、間が空いた。幹人は意を決して口を開く。

 「鈴川さんは、杉村さんとの結婚は考えてますか」
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