無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 自分でも唐突だと思った。だが鈴川は驚く様子もなく、少しだけ口角を上げた。

 「来たな」
 「すみません、急に」
 「いや。たぶん、そのうち聞かれると思ってた」

 椅子にもたれ、天井を仰ぐ。

 「考えてるよ。ちゃんと」
 「杉村さんは?」
 「こだわりないな。今の関係で十分だってさ」

 鈴川は小さく笑った。

 「一緒にいられて、仕事も楽しくて、それでいいって」
 「じゃあ……」
 「だから、俺が勝手に悩んでる」

 そう言って、鈴川は自嘲気味に息を吐いた。

 「結婚ってさ、片方がしたいだけじゃ成立しないだろ。でも、どっちかが考えはじめたら、なかったことにもできない」

 あまりにも的を射ていて、幹人はなにも言えない。

 「タイミングなんて、ほんと人それぞれだ。早い遅いじゃない。重なるかどうかだ」

 図面の端を指で叩きながら、鈴川は続ける。

 「無理に動こうとしても、だいたいうまくいかない」
 「耳が痛いです」
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