無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 鈴川は立ち上がり、図面を畳む。

 「誰かの隣にい続けたいなら、いつかは自分の言葉で選ばなきゃいけない」

 その背中を見送りながら、幹人は思う。
 答えはまだ出ていない。だが、考えないふりを続けられるほど、自分はもう軽くない。
 天音の隣に立ちたい。それが願いなら、いつかその覚悟を形にする日がくる。その〝いつか〟は、思っているほど遠くない気がした。

 プロポーズ。結婚。
 まだ、口に出せるほど輪郭ははっきりしていない。けれど、天音を想像した瞬間、胸の奥に迷いとは違う感情が灯る。
 誰かに奪われる不安よりも、彼女の人生に自分がいない未来を想像するほうが、ずっと怖い。それだけは、もう誤魔化せなかった。
 仕事が落ち着いたら。もう少し余裕ができたら。
 そうやって先延ばしにするほど、この想いは軽くならない。むしろ、確実に重さを増している。

 (……逃げ道にはしない)

 鈴川の言葉が、静かに胸の奥で反響する。
 幹人は背筋を伸ばし、もう一度モニターに向きなおった。
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