無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 思わず本音が漏れると、鈴川はちらりとこちらを見た。

 「年下で、今は仕事が大事で、余裕がない。それでも考えはじめたなら、それはもう〝本気〟だ。逃げ道にするなよ。〝まだ先〟って言葉」

 鋭いひと言だった。

 「それ、便利なんだ。相手を傷つけない言い訳にも自分を守る盾にもなる。でもな」

 鈴川は少し声を落とす。

 「一番残酷なのは、相手を待たせたまま自分だけ安全圏にいることだ」

 胸の奥に、ずしりと響く。

 「鈴川さんはプロポーズするんですか」

 間を置かず、鈴川は頷いた。

 「ああ。するつもりだ」

 迷いは見えない。

 「結果がどうであれ、今のままでいいとは思えなくなった。だったら、ちゃんと自分の気持ちは差し出す」

 それが、大人の覚悟なのだとわかる。

 「結婚はゴールじゃない。手段でもない。覚悟の形だ」
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