無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 坂口の顔が途端に曇る。眉間に皺が寄った。

 「聞いたよ。新入社員と付き合ってるんだって?」

 なんだか嫌な感じだ。言い方に棘がある。

 「六つも年下かよ」
 「四つ下。大学院卒だから」
 「どっちにしろ年下には変わりない」
 「年下のなにがいけないの?」

 つい喧嘩口調になってしまう。かく言う自分も、最初はそこにこだわっていたけれど。

 「天音、そういうの大丈夫なのか?」

 無難路線を逸脱していると言いたいのだろう。心配しているふりをした、値踏みする視線だ。少し前に休憩室で感じた〝惜しいことしたな〟という余韻が、いきなり輪郭を持つ。

 「大丈夫かどうかは、私が決めるから」

 きっぱり言うと、坂口は意外そうな顔をした。

 「……へえ。前の天音なら、そんな言い方しなかったけどな」
 「もう前の私じゃないの」

 そう返すと、坂口は大袈裟にため息をついた。

 「変わったな。いい意味で……って言いたいとこだけどさ」

 視線が探るように上下する。
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