無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
わざわざ報告したわけではないのに、ふたりの関係はいつの間にか周知の事実。興味津々な目を向けられるのは当然だろう。
「不備があれば、すぐ連絡ください」
「はい。確認してからご連絡しますね」
——〝ね〟。業務としては何気ないひと言だ。語尾が少しやわらかすぎただろうか。
「……お願いします」
幹人も、声のトーンを落として返す。
名前を呼ばない。余計なことは言わない。それでもふたりを取り巻く空気だけは、どうしても誤魔化せない。
「失礼します」
幹人が一礼し、踵を返す。
その背中を目で追いそうになって、天音は慌てて視線を落とした。
「寺崎さん」
背後から声がかかる。振り向くと、杉村が腕を組んで立っていた。いつもの穏やかな表情に、わずかに含みのある笑みを浮かべて。
「今の一往復で、婚約者ってわかるわ」
「……はい?」
杉村がこそっと囁いた言葉に思わず声が裏返る。
「書類の受け渡し、普通はあんな間、空かないもの」
「不備があれば、すぐ連絡ください」
「はい。確認してからご連絡しますね」
——〝ね〟。業務としては何気ないひと言だ。語尾が少しやわらかすぎただろうか。
「……お願いします」
幹人も、声のトーンを落として返す。
名前を呼ばない。余計なことは言わない。それでもふたりを取り巻く空気だけは、どうしても誤魔化せない。
「失礼します」
幹人が一礼し、踵を返す。
その背中を目で追いそうになって、天音は慌てて視線を落とした。
「寺崎さん」
背後から声がかかる。振り向くと、杉村が腕を組んで立っていた。いつもの穏やかな表情に、わずかに含みのある笑みを浮かべて。
「今の一往復で、婚約者ってわかるわ」
「……はい?」
杉村がこそっと囁いた言葉に思わず声が裏返る。
「書類の受け渡し、普通はあんな間、空かないもの」