無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 指先で画面をなぞりながら、まるでその場に建物が立っているかのように説明する。
 鈴川は口を閉じたまま図面を見つめなおし、それからふっと笑った。

 「やっぱすげぇな」
 「え?」
 「俺がモヤっとしてた違和感、全部言語化された」

 タブレットを軽く叩きながら、感心したように頷く。

 「まだ入社前だろ? それでそこまで見えるの、正直ずるいわ」
 「いや、たまたまですよ」

 そう言いながらも、幹人は少し照れたように視線を逸らした。

 「でも、この案なら意匠も殺さずに済む。ありがとう、助かった」

 鈴川が、幹人の背中をポンと軽く叩く。
 天音はそのやり取りを、言葉もなく見ていた。
 人懐こくて距離が近くて、少し危なっかしい年下の男の子。そう思っていた像が、音もなく塗り替えられていく。

 (ちゃんとプロなんだ)

 さっきまでパンを食べていた彼と、今の彼が同じ人物だとは思えない。
 鈴川がちらりと天音を見て、にやっと笑った。

 「寺崎、いいの捕まえたな」
 「なっ……」
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