無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 だからなのか、人に頼るという発想があまりない。頼るくらいなら自分でやる。できるかどうかより、やるしかないという選択肢しか持たなかった。
 子どもの頃は怪我をしても、あまり人に言わなかった。
 小学校低学年のある日、転校したばかりの学校で、体育の時間に鉄棒から落ちた。手のひらが擦り切れて血が滲んだが、泣くのも先生を呼ぶのも、なんとなく嫌だった。
 大丈夫と言えば、それで済む気がした。事実そうだった。

 中学に上がる頃になると、転校にも慣れていた。自己紹介で余計なことは言わず、部活にも入らない。繋がりになるようなものは極力避けるようになっていた。いつか断ち切らなければならないのがわかっていたからだ。

 大学に進学し、両親と離れてひとりで暮らすようになってからも、その性分は変わらない。おかげで女性と付き合っても長続きしなかった。

 カメレオンを飼ったのは、どこかで心の拠り所を求めていたからなのかもしれない。
 人の代わりになるとは思っていない。それでも、なにかと関わっていたいという欲求がどこかにあるのだろう。

 フレックスが枝の上で、ゆっくりと体の色を変える。
 環境に合わせて無理なく溶け込むその姿を見て、幹人は小さく息を吐いた。

 「お前は、うまいよな」

 変わることも、順応することも。
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