無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
変化の行き先
十二月に入り、夜の空気が一気に冷たくなった。
帰宅して部屋でコートを脱いでいると、スマートフォンがヴヴヴと振動音を伝えてくる。画面に浮かんだのは理世の名前だ。
《久しぶり。生きてる?》
通話をタップしてすぐ電話の向こうから、聞き慣れた彼女の声が飛んできた。
「ちゃんと生きてます」
《何事もないみたいでよかった》
「……何事もなくは……ないかも」
思い浮かんだのは幹人の顔だ。特になにかされたわけではないが、これまでの職場と違うのはたしか。天音の言う平穏とは言い難い。
高校時代によく通った洋食屋に一緒に行ったあと、理世とは簡単なメッセージのやり取りだけで、カメレオン男との再会については話していなかった。
《なにかあったの?》
理世の声が弾む。おもしろい話が聞けるのではないかと期待しているみたいだ。
「例のカメレオンの飼い主がインターンでうちに来たの」
《ええっ!?》
理世の声がひっくり返る。驚くのも無理はないだろう。なにしろ三回も偶然の出会いがあったのだから。