学校がこわい君へ ~ようこそ! ここはポン先生とカンちゃんの『学校攻略作戦室』です
第4話 新メンバーあらわる
午後。
わたしは家の外へ出た。
正直、少しだけ怖い。
でも、ポン先生の変な顔と、カンちゃんのメッセージを思い出したら、なんだか笑えてきた。
「学校攻略作戦室」のドアを開ける。
「おっ!」
ポン先生が立ち上がった。
白髪の頭がぴょこんと揺れる。
「ヒマリ隊員、出動ご苦労!」
「隊員じゃないです」
「そうだった! 総司令官だった!」
「ちがいます」
すると、横からカンちゃんが言った。
「気にするな。ポン先生の脳内設定だから、ムシムシ」
「ひどくない? 高齢者を敬えとあれほど……」
ポン先生が肩を落とす。
なんだろう。
この人たちといると、少しだけ力が抜ける。
その時、部屋のすみで、男の子がびくっと肩を震わせた。
初めて見る顔だった。
小学4年かな? 5年かな?
机に向かってうつむいている。
「新メンバー?」
わたしが小声で聞く。
カンちゃんがうなずいてささやいた。
「ソウタさんていうの」
男の子は顔を上げた。
でもすぐに目をそらす。
カンちゃんが続けた。
「学校で男の先生が、すごく大きな声ですごい迫力で怒鳴ったんだって」
「そっか。やだよね、わかる」
「それ以来、大人の大きな声が苦手」
わたしは胸が少し痛くなった。
ソウタさんは、こわいんだ。
わたしは友達がこわい。
こわいものは、人によって違う。
友だちだったり、
教室だったり、
先生だったり。
でも、
こわい気持ちは、本物だ。
その時だった。
「ソウタ!」
突然、ポン先生が大声を出した。
「ひっ!」
ソウタくんが飛び上がる。
わたしもびっくりした。
カンちゃんが頭を抱える。
「ポン先生ぃぃ!」
「大丈夫だ!」
「何がですか!」
でも、
ポン先生は真面目な顔をしていた。
「すまん、今のは失敗だ」
「最低だな」とカンちゃん
「最低ですね」とわたし
「うむ!」とポン先生がなぜか胸を張る。
「子どもの世界にはな」
ポン先生は立ち上がった。
「失敗してもいい場所が必要なんだ」
そして。
ソウタくんの目線までしゃがんだ。
「びっくりさせてごめんな」
優しい声だった。
「今のは失敗だ。先生は昔からいっぱい失敗し続けてきた」
「……本当?」
「本当だ。通知表に『落ち着きがない』って毎年書かれた」
「先生なのに?」
「先生になる前だ!」
ソウタくんが少しだけ笑った。
わたしも笑う。
カンちゃんはあきれた顔をしていた。
だけど。
その口元は少しだけ優しかった。
窓から爽やかな風が入ってきた。
わたしは思った。
ここは学校じゃない。
学校へ戻るためだけの場所でもない。
心に傷を負った子供たちが、少しずつ笑えるようになる場所。
学校攻略作戦室、
わたしもソウタさんの役に立ちたい。
紙に書いた
・ここにきたから 丸
・カンちゃんとハイタッチできれば 二重丸
・ポン先生に「大きな声ださないで」といえたら 花丸
カンちゃんがちらっと見た。
「いいじゃない」
ソウタさんの前に行った。
「あの、わたし、ヒマリ」
「……」
「これ、見て」
紙を差し出した。
ソウタさんはにこりともしないで受け取った。
ああ、迷惑だったかな。
カンちゃんが割り込んできた。
「ソウタさん、よかったね。すでに丸だよ。
ハイタッチしようか?
ほらー、いえーい!」
ソウタさんは暗い顔でハイタッチをした。
「これで2重丸。次はポン先生だ。
いってやりなよ。うるせーぞって」
ソウタさんは首を振って、パーカーをかぶりポケットからマスクを出してつけた。
「ああ、いいよ。
自分のペースでやっていこうな」
カンちゃんが笑った。
ポン先生が、静かな音楽をかけた。
爽やかな午後、ゆったりとした時間が流れている。
これでいいんだ、ここは。
【完】
わたしは家の外へ出た。
正直、少しだけ怖い。
でも、ポン先生の変な顔と、カンちゃんのメッセージを思い出したら、なんだか笑えてきた。
「学校攻略作戦室」のドアを開ける。
「おっ!」
ポン先生が立ち上がった。
白髪の頭がぴょこんと揺れる。
「ヒマリ隊員、出動ご苦労!」
「隊員じゃないです」
「そうだった! 総司令官だった!」
「ちがいます」
すると、横からカンちゃんが言った。
「気にするな。ポン先生の脳内設定だから、ムシムシ」
「ひどくない? 高齢者を敬えとあれほど……」
ポン先生が肩を落とす。
なんだろう。
この人たちといると、少しだけ力が抜ける。
その時、部屋のすみで、男の子がびくっと肩を震わせた。
初めて見る顔だった。
小学4年かな? 5年かな?
机に向かってうつむいている。
「新メンバー?」
わたしが小声で聞く。
カンちゃんがうなずいてささやいた。
「ソウタさんていうの」
男の子は顔を上げた。
でもすぐに目をそらす。
カンちゃんが続けた。
「学校で男の先生が、すごく大きな声ですごい迫力で怒鳴ったんだって」
「そっか。やだよね、わかる」
「それ以来、大人の大きな声が苦手」
わたしは胸が少し痛くなった。
ソウタさんは、こわいんだ。
わたしは友達がこわい。
こわいものは、人によって違う。
友だちだったり、
教室だったり、
先生だったり。
でも、
こわい気持ちは、本物だ。
その時だった。
「ソウタ!」
突然、ポン先生が大声を出した。
「ひっ!」
ソウタくんが飛び上がる。
わたしもびっくりした。
カンちゃんが頭を抱える。
「ポン先生ぃぃ!」
「大丈夫だ!」
「何がですか!」
でも、
ポン先生は真面目な顔をしていた。
「すまん、今のは失敗だ」
「最低だな」とカンちゃん
「最低ですね」とわたし
「うむ!」とポン先生がなぜか胸を張る。
「子どもの世界にはな」
ポン先生は立ち上がった。
「失敗してもいい場所が必要なんだ」
そして。
ソウタくんの目線までしゃがんだ。
「びっくりさせてごめんな」
優しい声だった。
「今のは失敗だ。先生は昔からいっぱい失敗し続けてきた」
「……本当?」
「本当だ。通知表に『落ち着きがない』って毎年書かれた」
「先生なのに?」
「先生になる前だ!」
ソウタくんが少しだけ笑った。
わたしも笑う。
カンちゃんはあきれた顔をしていた。
だけど。
その口元は少しだけ優しかった。
窓から爽やかな風が入ってきた。
わたしは思った。
ここは学校じゃない。
学校へ戻るためだけの場所でもない。
心に傷を負った子供たちが、少しずつ笑えるようになる場所。
学校攻略作戦室、
わたしもソウタさんの役に立ちたい。
紙に書いた
・ここにきたから 丸
・カンちゃんとハイタッチできれば 二重丸
・ポン先生に「大きな声ださないで」といえたら 花丸
カンちゃんがちらっと見た。
「いいじゃない」
ソウタさんの前に行った。
「あの、わたし、ヒマリ」
「……」
「これ、見て」
紙を差し出した。
ソウタさんはにこりともしないで受け取った。
ああ、迷惑だったかな。
カンちゃんが割り込んできた。
「ソウタさん、よかったね。すでに丸だよ。
ハイタッチしようか?
ほらー、いえーい!」
ソウタさんは暗い顔でハイタッチをした。
「これで2重丸。次はポン先生だ。
いってやりなよ。うるせーぞって」
ソウタさんは首を振って、パーカーをかぶりポケットからマスクを出してつけた。
「ああ、いいよ。
自分のペースでやっていこうな」
カンちゃんが笑った。
ポン先生が、静かな音楽をかけた。
爽やかな午後、ゆったりとした時間が流れている。
これでいいんだ、ここは。
【完】


