元カレは、今も私をミケと呼ぶ
深呼吸をしてから、慎重にメッセージを打ち込む。

「今度、ゆっくり会えないかな」

形があれば安心できると思っていた。

でも、今ならやっと分かる。

あの頃、陽太が私を大切に扱ってくれたこと。

その温度こそが、何よりも確かな「形」だったのだと。

もう一度だけ、彼の温かさに触れたい。
今度は彼のやさしさに甘えるだけではなく、私からも温かさを返したい。

私の気持ちは、もう止められなくなっていた。


送信ボタンを押すとき、かすかに指が震えた。

(お願い……!)

送信済みの画面を、祈るような目で見つめる。

その時。
すぐに、手の中でスマホが短く震えた。

画面に表示されたのは、
待ち焦がれた名前と――

『今、ちょうど同じこと送ろうとしてた。俺もミケに会いたい』

心臓が大きく跳ねる。

胸が熱くなって、泣きそうになってしまう。
同時に、ほっとしたからか、笑い声もぽろりと零れてしまった。

すぐに返信しようとして、
スマホ画面の時刻が目にとまり、小さく悲鳴を上げた。

慌てて家を飛び出す。

また電車に乗り遅れてしまうかも。

それでも、不思議と足取りは軽かった。

よく晴れた空を見上げる。
昨日の雨が嘘のように上がり、空気が澄んでいた。

彼の笑顔に似た朝日に向かって、私なりの精一杯な笑みを向ける。


(――待ってて)
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