元カレは、今も私をミケと呼ぶ

特別編 元カレ目線

――仕事終わり、金曜の夜。
週末の解放感に浮き立つ人混みが、改札へ向かって一斉に流れていく。

雨上がりのホームには湿った空気が残り、電車が入るたびに生ぬるい風が吹き抜けた。


その時、視界の端に、見覚えのある後ろ姿が飛び込んできた。

心臓が跳ね、足が止まる。

まさか。いや、そんなはずはない。

……いやいや、待て。

あれ、やっぱり、ミケじゃないか?


見間違いだと言い聞かせようとしても、目が離せない。

ごくりと喉が鳴る。

確かめたい。もっと近くで。

確信に変わるまで、時間はかからなかった。

二年も会っていないのに、すぐに分かってしまう自分がいた。
気付けば、名前がこぼれていた。

「……ミケ?」

振り向いた彼女と、視線がぶつかる。

「あ……」

やばい。本物だ。

その瞬間、自分でも引くくらい、胸の奥が跳ね上がった。


二年前に別れた、実花(みか)

俺しか呼ばない。俺だけの特別な名前。

――ミケ。
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