元カレは、今も私をミケと呼ぶ
うっわ、可愛い。
なんだよ、すごく大人っぽくなってる。


もっと近付くと、花のようないい匂いがした。

彼女は、道端で見かける小さな白い花になんとなく似ている。
名前は知らない。
今朝もちょうど、その花を見たばかりだった。

だから余計に、この再会に不思議な縁を感じてしまう。


「変わったな」なんて冷静なフリをして思ってみるけれど。
驚いた時に少しだけ目を丸くする癖は、あの頃のままだ。

懐かしさがこみ上げて、思わず顔が綻んでしまう。

落ち着け、俺。ニヤけすぎだろ。


「え、陽太(ようた)……?」

名前を呼ばれただけで、また心臓がうるさくなる。

破壊力がやばい。

俺が好きだった、あの鈴を転がしたような声。
久しぶりに聞くその響きに、もう、笑いを堪えるのが必死だった。

たぶん今、相当だらしない顔をしてる。


不意に人の流れが激しくなり、押されそうになったミケを慌てて庇う。

(触れるなよ、俺)
(……いや、転びそうなら支えるべきだよな?)

(でも触るな。指先一つ、慎重にしろ)

もう彼氏じゃない。
この距離感が、今の俺には難解すぎる。

(嫌がられたら、その場で死ねる)

そんな葛藤なんて露知らず、ミケは不思議そうに俺を見上げていた。
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