元カレは、今も私をミケと呼ぶ
さりげなく、彼の左手の薬指を見てしまった。

(……何もついてないんだ……)

彼ならとっくに、誰かと幸せになってると思っていたから。
なぜだか安堵してしまって、途端に恥ずかしくなった。

陽太の腕がゆっくり離れていった。
触れていないのに、背中に熱を感じてしまう。

幻だとしても、そのぬくもりが消えていくのが惜しい。

そう思ってしまう自分に、胸がざわついた。

「あ、ありがとう……」

小さくお礼を言ってチラリと見ると、陽太はやさしそうに微笑んでいた。

なんとなく、その笑顔をまっすぐ見られない。
少しだけ視線を横にずらした。

「陽太とここで会うなんて驚いた」

とにかく今は、自然を装って話してみる。

「俺もだよ。すごくビックリした!」

陽太はパッと笑顔になった。
そして、まじまじと見つめられる。

「ミケ……なんか、変わったね」

ふわりと穏やかな顔をして目を細める。

「大人っぽくなった」

そう言って彼は、大きくうなずいた。

(……!)

彼の表情と言葉が、鋭くて冷たい痛みとなって胸を突く。
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