元カレは、今も私をミケと呼ぶ
恐る恐る見上げてみると、陽太は目を丸くしていた。

そして、すぐに笑いながら大きく手を振った。

「違う違う、友だち!
大学のときの、ほら、ヤマトん家だよ!」

それに、「さっきは、ちょっと確かめたいことがあった」と、
陽太はスマホをしまったポケットを軽く叩いた。

「ああ」

懐かしい名前が出てきて、気が抜けた返事をしてしまった。

口元が緩んだのを気付かれたくなくて、慌ててそっぽを向く。

(私、全然変わってない)

彼は、昔と同じように、聞けばすぐ答えてくれる。

だけど私は、いつだって素直になれない。

左手を隠していた腕をおろした。
そして、真っ直ぐに陽太を見上げた。

「私の方は、男の人。でもね、ただの取引先だよ」

微笑みかけると、陽太の瞳がかすかに揺れた。

しばらくの間、視線が重なる。

「そ、そっか!」

そう言って、陽太の笑顔がふわりと柔らかくなる。

(……それも、良いことがあったときの顔)

それがなぜか嬉しくて、胸が温かくなった。
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