あの日の風の、その続き〜戦う公爵令嬢と、王女が選んだ未来





エリシアと別れて訓練場に戻ると、まだクロードは戻っていなかった。

近くにいた騎士に、声をかける。


「クロードは?」

「総長に呼ばれて一緒に行ったきり戻ってないですね。」

「そう。」


午前中の訓練を終えても戻ってこなかったクロードを探して、リゼは城の庭を歩いていた。

そのとき--


「じゃあお前リゼ様に勝てるのか?」

「無理だろ。うちの団員でリゼ様より強いのは団長くらいだよ。」

休憩中の仲間の騎士のそんな会話が耳に入る。

ふふん、と得意げな気持ちになったのも束の間。


「おい、聞いたか?クロードに、次期副団長の話が来てるらしい。」

「さっき総長に呼ばれてたのはその話だったのか。」


クロードが次期副団長?


リゼの足が止まる。





--バン!

「兄様!」

扉を開けると、正面の机に座るゼンと、その前に立っているクロードの姿があった。


「リゼ。部屋に入る時はノックをしろと何度も言っているだろう。」

「……すみません。それより、本当なんですか?クロードが次期団長って。」

「もう広まってるのか。噂好きがいたもんだな。」

否定は、されなかった。

それだけで、充分だった。


--私の方が強いのに。


喉まで出かかった言葉を、リゼは飲み込む。


わかっている。

自分は女であることくらい。

どんなに強くなっても、それは変えられない。


「……リゼ。」

クロードが何か言おうとしたけれど、その続きを聞く前に背中を向けた。


「……クロード。おめでとう。」


強くなりたい。

ずっとそう思って頑張ってきた。

それなのに。


私は--認めてもらえないの……?



扉が閉まる音だけが、静かに響いた。


残された部屋で、ゼンがポツリと呟く。


「クロード、すまないな。」

何に対してなの謝罪なのか、クロードにはわからない。

「……いえ。」


「お前には、みんな期待している。お前ならできる。俺が保証する。」


尊敬するゼンに推薦され、こうして言葉をかけられる。

本来なら、誇らしいはずだった。

それなのに。


さっきのリゼの表情が、頭から離れない。

クロードは小さく、顔を歪めた。

ゼンもそれ以上、何も言わなかった。




< 3 / 36 >

この作品をシェア

pagetop