冷徹御曹司との運命の再会 〜隠していた双子ごと愛されました〜
 夕飯は本当にパーティーのようだった。
 チキンの和風ステーキに野菜たっぷりのパイシチュー、茄子と鶏肉の焼きびたし、蓮根の甘辛和え、レモンソースのサラダ。和洋折衷のメニューがテーブルいっぱいに乗っていた。

「わあ! おたんじょうび会みたい」
「やったー! ぱーてぃーだ!」

 篤史は喜ぶ子供達を横目に、じっくりと千恵の料理を味わっていた。

(食べるときの篤史さん、昔のままだわ)

 満足そうに目を細める彼を見ていると、千恵の胸が以前と同じように温かくなる。

「おかわりもたくさんありますからね」

 気を抜くと泣いてしまいそうだった千恵は、いつも以上にくるくるとよく動き涙を振り切っていた。
 外では暴風雨の音が激しくなっていたが、部屋の中は笑い声に包まれていた。


 結局、大興奮の子供達はいつも以上によく食べ、その興奮のままお風呂やお片付けを終えた。
 そしておもちゃの電池が切れるかのように、急にうとうとし始めた。

「そろそろ寝ようか。ほら、篤史さんにお休みなさいのご挨拶して」

 千恵が二人をつれて寝室に向かおうとすると、二人は目をこすりながら篤史にぎゅっと抱きついた。

「ぼく、まだあつしさんといっしょにいたい」
「あたしもー」

 二人は篤史を見上げて「いっしょにねよ?」と言い出した。
 さすがの篤史も困ったように微笑んで千恵に「どうする?」と目線を送ってくる。

「篤史さんもゆっくり休ませてあげないと。ほら、行くよ」
「……やだ」
「やだー! いっしょがいい!」

 眠いのも相まって二人の機嫌がどんどんと悪くなっていく。

(まいったな……)

 一人ずつ無理矢理引き剥がして連れていくか、と思案していると篤史が二人を抱えて立ち上がった。

「じゃあ今夜は俺の部屋で寝るか」
「うん」
「ねるー」

 それはあまりに迷惑だろうと千恵が制止の手を伸ばすと、彼は千恵の耳元に口を寄せた。

「二人が眠ったら俺が寝室に運ぶよ」
「……すみません。お願いします」

 客間の布団に子供達を下ろすと、二人はあっという間に寝息をたて始めた。
 すやすやと安心しきった表情で眠る二人を見ていると、千恵の口から安堵のため息が漏れた。

「子供達がご迷惑をおかけしました」
「いや、こちらこそ楽しませてもらったよ」

 彼は布団の脇に座り、子供達の頬をそっと撫でる。その表情は慈愛に満ちていた。
 まるで本当の我が子に触れているような――。

(黙っていていいのかな)

 彼の顔を見ていると罪悪感が沸き上がってくる。

(でも、大企業の社長なのよ。私達が足枷になってしまうわ)

 自分にそう言い聞かせて口をきつく結ぶ。

 すると篤史が心を読んだかのように「この子達は……」と口を開いた。

「千恵と俺の子達、じゃないのか?」

 ためらいがちな口調とは裏腹に、篤史の瞳には強い光が宿っていた。まるで確信しているかのようだ。
 千恵は彼の問いに答えられなかった。

(違うって言わなきゃ)

 心では分かっていても口から言葉が出ない。うつむいて口をきつく閉じる。
 沈黙の中、外の暴風雨が窓をガタガタ鳴らす音だけが聞こえていた。

(もう駄目。黙ってられない)

 白状しようと唾を飲み込み重たい口を開くと、篤史がふっと微笑む気配がした。
 彼を見ると、そこには昔と変わらない笑顔があった。千恵だけに向けられた大好きな表情。

「まあ、いいんだ。千恵が元気だって知れて良かった。さて、そろそろ子供達を運ぼうか」
「お、お願いします……」

 篤史が立ち上がろうとすると、子供達がそれぞれ彼の裾をつかんでいることに気づいた。
 そっと離そうとしたが、思いのほか力が強い。篤史はなんとか離そうと悪戦苦闘していたが難しいらしく、諦めたようにそのまま横たわった。

「仕方ない。このまま寝るよ。千恵はどうする?」
「え? えっと、起きたとき子供達が混乱するといけないから……部屋の端を使わせてもらうわ」
「じゃあこの毛布使って。おやすみ」

 千恵が毛布を受け取ると彼はそのまま目を閉じた。千恵はそっともう一枚掛け布団を持ってくると篤史にかけて、自分も横たわって毛布にくるまった。

「おやすみなさい、篤史さん」


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